企業にとって、続々と社員が辞めていなくなってしまうことほど、避けるべき事態はありません。人工知能が全てを管理するような時代にでもならない限り、仕事の一切は人間が担っています。それが失われることは、会社としての機能不全に直結する問題です。最初は、あまり重要ともいえない社員が辞職したことを、気にも留めないということもあるのでしょう。しかしそれが呼び水となって、人材の流出が止まらなくなることも、決して珍しくはないのです。実際に、伝統的な職人の世界では、後継者不足により存亡の危機に至っています。これを対岸の火事ととらえ、安閑としていることは許されません。
人材がいなくなるということは、大抵は会社に嫌気が差したことを示します。では、どのようなときに、見切りをつけられてしまうのでしょうか。それは、社内に蔓延る矛盾に他なりません。たとえば上司が複数在籍している場合、まったく異なる指示を社員が同時に受けてしまうこともあります。これでは、どちらの上司に従っても、叱責は免れません。懸命に働くほど、評価が下がってしまうようなところに所属したいという人など皆無です。他にも、残業は禁止しつつ仕事題を増やしたり、業績を上げるために無駄な会議を繰り返す部署も少なくありません。こうした状態は二重拘束ともいわれ、メンタルに深いダメージを残します。人間が自身の幸福のために働いているのですから、不幸にする会社とは縁を切って当然でしょう。
人材の定着を促したいのであれば、業務における矛盾の解消を優先することが大切です。社内に長く残るほど経験が蓄積され、頼りがいのある人物に成長してくれます。業績を継続的に向上させたいのであれば、社員を尊重する職場作りを心がけていきましょう。